文芸処・椋岡屋

HOME > 作品集 > いつの日にか > あとがき

作品集

掲載日:2013年02月01日

★いつの日にか

あとがき

 中島みゆきファン以外で「夜会」をご存じの方はそんなに多くないと思うのですが、この作品を「『夜会』観劇」というスタイルを取ったのは、夜会Vol.14「24時着00時発」が 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に触発されて作られ、至るところで、鉄道が登場するためです。第1幕には「線路の外の風景」「廃線のお知らせ」「遺失物預かり所」 という曲があるぐらいです。

 それをファンの視線で書くと単なる鑑賞記になるので、主人公を中島みゆきファンでもなく、舞台鑑賞を趣味にしている訳でもなく、さらに言えば、 鉄道が好きで鉄道会社に入った訳でもない、河合志穂に設定して、彼女の視点で書いたのが、この「いつの日にか」です。


 河合志穂の設定は、2014年9月15日現在も進行中の「聴け、蒼天の詩を」の前進である、「六月の太陽」の時からあり、 品川希望のぞみ(後に小杉希望となる)の高校時代からの親友かつ多摩川高速鉄道社員で、 国鉄職員の親の転勤に伴い各地を転々としていた、と決めていました。「聴け、蒼天の詩を」の旧作では、多分登場しないだろうなぁ……と思っていたときに、 降ってわいてきたのが、諦め掛けていた、中島みゆきさんの夜会Vol.14「24時着00時発」の観劇でした。演目そのものは、前回の再演という形がとられていますが、 実際には、前回伝えきれなかった事をもっと踏み込んで伝えると同時に、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」へのオマージュということで、 残っているのは骨格の部分だけで、肉付け、装飾のほとんどが変わっていました。

 第2幕で、ふるさとゆきの列車が廃墟堰に到着した時に、アカリが「私はふるさとには帰りたくない」と言い放つシーンがあり、そこで「河合志穂と似ている」 と思ったのが運の尽き、言葉の神様が降臨しました。帰れないと帰りたくないとでは言葉の持つ意味合いが異なりますが、でも、本当はふるさとに帰りたい、 その思いは一緒であり、いつの日にか帰れる事を思いながら、舞台では十三夜の月を見るわけです。

 国鉄民営化に伴うJRへの採用に関しては、本当はもっと泥沼化したものであり、こんなにあっさり流しても良いものか? と思ったのですが、 舞台のワンシーンを見て、思い起こすものには限度があるので、逆にこの程度がちょうどいいのかもしれません。


 「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版では、河合志穂の登場が結構あるので、彼女のプロフィール作品として掲載した次第です。


 夢を現実に出来る人は数少なく、多くは夢を追い求めて日々を暮らしていると思います。椋岡も夢(というよりは目標)を現実のものにすべく、 蛇行した命の線路を走っています。いつかは、今のことが終わり、新しく始まり、生まれ変わります。そのことを思いながら、同時に日々生かされている事を感謝しながら、 生きていきたいものです。


 最後に、この作品を夜会「24時着00時発」へのオマージュとしたいと思います。