文芸処・椋岡屋

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図書室

掲載日:2013年05月24日

★蒼色の笛

「あとがき」という名の解説

 早いもので「文芸処・椋岡屋」の活動も10年を迎えまして、記念作品として、「今まで書いてきた作品の総集編」という位置づけで企画したのですが、いざ、 作業を始めたら「今まで書いてきた作品の裏側&後日談総集編」+「今、椋岡が伝えたいこと」+「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版ネタバレ要素バッチリ、 という作品になってしまいました。本当は爽やかな方向に持って行きたかったんですけどね(苦笑)。おまけに、短編にするつもりだったのに、 本文だけでも「聴け、蒼天の詩を」旧作第2巻より長くなってしまったものですから、発表をどうしようかと、本気で考えました。


 今回の作品が長くなった理由に、まず、発表した作品が多く文量も多かったこと、発表した時点から現在に至るまで、人生経験を積んだことで違った角度で作品を読み返し、 それを反映したこと、そして、「聴け、蒼天の詩を」を全面改訂することで時節設定が変更となり、今まで書いてきた作品の時節を全面改訂版の設定と合わせたためです。 まさか、小杉希望のぞみ……愛情を込めて希望ちゃん……のプロフィール作品である「聴け、蒼天の詩を」 で致命的なミスをしていたなんて、思ってもいませんでしたから。ええ、他の作品では、労働基準法改正に伴う女性の深夜勤務規制の実質廃止を1999年と書いているのに、 「聴け、蒼天の詩を」では1998年。希望ちゃんが乗務員になるタイミングなので、そのミスに気付くまで、誰にも指摘されなかったことの方で落ち込んでおりました。 それにプラス、椋岡の人生観が180度変わってしまい(こちらが先)、どっちにしても「聴け、蒼天の詩を」を全面改訂することを避けられず、それならば、 今まで書いてきた作品を新しい時節設定に合わせよう、という形で執筆を始めました。

 尚、この作品、2013年に、今まで発表してきた作品の回顧と考察をしておりますので、登場人物もそれなりに歳を重ねております。希望ちゃんを20歳代前半から半ばの 「若い運転士」と思っていた方は、間違いなく面食らったと思います。もっとも、一部の作品に希望ちゃんのプロフィールを載せており、そこにはしっかりと「1972年生まれ」 と書いてますし、サイトの「うらばなし」にもプロフィールを掲載していますので、それらをご覧頂いた方ならお分かり頂いているかと思いますが。

 それから、今回の作品で、希望ちゃんとペアを組んでいる利緖としおさんについてですが、 「聴け、蒼天の詩を」が彼のプロフィール的作品でもある関係で、詳しくは書いておりません。書いたら最後、ネタバレですので。


 解説に入る前に、「聴け、蒼天の詩を」の全面改訂で、希望ちゃんの再婚が2004年6月にずれ込みました。そのため、「小杉希望」で登場している作品の多くが、 本当は「小牧希望」でした、となってしまい、話もそれに合わせております。あと、どうしても希望ちゃんとの接点がなかった作品、「白の花束」を除く掌編作品、 アンソロ参加作品、パセラシングルを除くネタ本・実録本は含まれておりません。予めご了承下さい。

 2014年5月現在も、「聴け、蒼天の詩を」の全面改訂作業を行っておりますが、社会派の色を含ませた関係で、2013年5月の時点と流れが変更となっております。 それに合わせて、当作品も一部改訂しております。解説は改訂後の内容で記載しておりますので、そちらも併せてご了承下さい。


 それでは、それぞれの章の大雑把(?)な解説に入りましょう。

 まず、「プロローグ~蒼色の笛」ですが、ストレートに中島みゆきさんの「風の笛」からインスピレーションを得ました。というよりは、 「風の笛」を初めて聴いた時に思ったのが「希望ちゃんと利緖さんへのメッセージソング」でした。そこに希望ちゃんの「ちょっと主婦モード」を織り交えています。 この時点で希望ちゃんのイメージが崩れたかも、と思いましたが、小杉姓が再婚後の名字、というのは様々な作品に書いていますから、主婦モードが出ない方がウソです(笑)。


 「希望のご意見番」は、重要な登場人物の一人である、宮浦くんが主人公となっている「雪の天使」の回顧が中心となっております。宮浦くんが登場してから、 何かとつけて希望ちゃんとつるんでおり、各作品中でも、たいてい相談役です。「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版では、更に登場回数を増やす方向で作業中。 そして、どん欲な椋岡は、「雪の天使」に登場した電車の編成で、希望ちゃんの線路見習い初運転を……と思ってしまいました。今回の企画、結構収穫が多いです。


 「多摩高本牧駅MD騒動」「知られざる希望の苦悩」は、これまた重要な登場人物である内海くんの回顧と考察です。 内海くん関係の作品の時節設定に悩みましたが、変えることで色々と影響も出てくるので、内海くんの職務設定を変更することで、なんとか切り抜けました。 ただし、前述のとおり、希望ちゃんの再婚が2004年6月にずれ込んだので、「多摩高本牧駅MD騒動」の大半は小杉希望ではなくて、小牧希望での話になりました。

 「多摩高本牧駅MD騒動」の部分では、鉄道員の家族になることと、家族に看取られることが本当の幸せなのか、という考察を入れましたが、いずれも、 椋岡の人生経験から来ています。今だから言えますが、実は、椋岡はとある鉄道会社の社員の元家族です。子供はいませんが、有事の時に家を守ることには変わりませんでした。 家族だった時に、相方の業務に直接支障が出る有事は無かったのですが、関係する業務での有事の話をして、怒られることもあれば、延々と愚痴を聞かされることもありました。 鉄道員に恋するのも、これらのことを承知の上なら良いのですが……。

 「知られざる希望の苦悩」の部分では、作品集「そのとき」のタイトルナンバーである「そのとき」の裏側ですが、書いた当初は気付かなかったんですね。 戯曲書きから小説書きに戻った時に読み返して、違った角度で見ることで、希望ちゃんの言葉と内海くんの行動が結びつくことに気付いた次第です。こう見えても、 希望ちゃんも人の子なので(苦笑)。


 「現代の湖山長者」は、内海くんとコンビを組む吉岡くんの回顧なのですが、どうも吉岡くんの話はネタ要素が高くて、執筆しながらも笑っておりました。 利緖さんの実家が横浜市某区というのは「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版の方で設定していたのですが、これは偶然です。小牧家の本家が鳥取、 というのは作者側の都合なんですけどね。余談ながら、「とうふちくわ」は「豆腐竹輪」として食品成分表に載っておりまして、何気なく豆腐の項目を見て、 その名前を目にした時には驚愕しました。鳥取が帰省する場所ではなくて、用事がある時に行く場所になってしまったので、 「とうふちくわ」を食べる機会も減ってしまったのが残念です。


 「涼子の色恋沙汰」は、「恋文」と「思い出の鍵」をまとめて回顧、という形にしたのですが、「思い出の鍵」では矢口くんがメインでありながら、 涼子ちゃん視線の章もあるので、まとめるのに一苦労しました。涼子ちゃんと言えば、「All Night Pasela シングル」があるのですが、これを組み入れるとネタまっしぐらになるので、 どこまで組み入れるか考えました。何分、ティアズマガジンでご紹介して頂きましたので、すっ飛ばす訳にはなりません。本当に要点だけしか組み入れていないのですが、 それでもネタになってしまったのが何とも。希望ちゃんちの事情については、どの作品にも書いていませんが、希望ちゃんが運転士を続けている理由の一つ、 ということで組み入れました。


 「さらに、ほんとうのきもち」は、「ほんとうのきもち」を発表してから色々と社会情勢が変わり、現状を調べようとして撃沈しながら書き進めました。 草稿も二回書き直しましたし。結局のところは「憧れ」になってしまうのか……と思わざるを得なかったのですが、憧れるにしても、現実は見て頂きたい、 という考えは変わりませんので、「ほんとうのきもち」より踏み込んだ内容を書いております。この章では、希望ちゃんの名前の由来を書いておりますが、 あくまでも由来だけです。それ以上のことは本当にネタバレになってしまうので、「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版が完成するまでお待ち下さいね、状態です(苦笑)。


 「労組が絡むとやっかいな話」は、強引に、希望ちゃんの師匠である片倉さんの話へ持って行き、「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版のもう一つの色とも言える、 多摩川高速鉄道の内部事情を少し臭わせて、そこからメトロ東京が舞台の「異境の鐘~はるか、大地へ」に持って行きました。 「Lament」で片倉さんの臨海線営業所異動を書いたのですが、「聴け、蒼天の詩を」の作業中に片倉さんの異動の裏側がちょっと過ぎってしまったが最後、 「聴け、蒼天の詩を」に社会派の色を含ませることを決め、ちょっとネタバレ要素込みに仕上げてみました。希望ちゃんの過走距離ですが、当初は100メートルでしたが、 過走の理由からすると長すぎるので、距離を縮めました。それでも「その理由だと長い」距離と言われそうなのですが、内部事情の発端でもありますので、 この距離で話を進めることに(苦笑)。この章に出てくる「510行路の桜」は、図書室に掲載中の「ワンマン~510行路の桜~」のことですので、 お時間がある時にでもご覧頂ければと思います。

 メトロ東京の労組関係に繋げるのも強引になってしまいましたが、繋ぎの部分はどちらかと言えば、利緒さんの過去を少し説明、と言ったところでしょうか。 「異境の鐘~はるか、大地へ」では、労組や関係する大学をイニシャル表記をしていましたが、戯曲の習作を書いた時に、 メトロ東京労働組合と地下鉄労働組合という名称を付けておりまして、それをしっかりと利用。 私鉄総連は……調べたかったのは春闘の一斉ストライキのことだったのですが、そこで「青年女性協議会」という組織があることを知り、 希望ちゃんも加入対象の年齢に入ってしまったので、それを基に次の章に繋げました。


 「希望が愛する人たち」は、奥沢くん、小牧くん、そして利緖さんの話なのですが、もう、ここは「聴け、蒼天の詩を」旧作と全面改訂版との変更点暴露、 となりました。全面改訂作業中に色々と魔が差しまして、小牧くんの設定をいじったら、かなりの影響が出てしまいまして、この章は奥沢くんの部分以外は、 2014年1月に書き直しています。 それでいて、肝心な「小牧くんが亡くなってから、希望ちゃんと利緒さんが婚約するまでに、二人の間に何があったのか」という部分を伏せているあたり、やらしい作者です。 あと、骨髄バンク登録に対する椋岡の見解も組み入れました。輸血に関しては、一般的にはケガや手術で行うと思われがちですが、内科範疇でも、 あまりにも酷い貧血の時にも輸血することがあります。椋岡も、2012年夏に入院した際、酷い貧血で輸血を受けた側なので、もうこの時点でドナー登録が出来なくなりました。 ドナー登録の際には、その辺りのリスクもご考慮頂ければと思います。


 「犬も分かる臨海線~枚方の異動を巡って」も、片倉さんから強引に繋げました。枚方くんが主人公の主な作品に「シリウスの涙」と「Lament」があるのですが、 前者は希望ちゃんと全く接点がなく、いかに繋げるか考えました。幸いにも、後者の方には希望ちゃんが登場しており、「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版の時節設定に合わせたら、 ちょうど、枚方くんが大森電車区に異動するのと、希望ちゃんが主任に昇格するのが同じ年の同じ時期、となりまして、まずは「Lament」で繋げ、 前提作品の「シリウスの涙」を繋げることが出来ました。もっとも、枚方くんが市民吹奏楽団所属、という部分で、詰所や休憩室で会った時に吹奏楽の話をしていた、 という繋がりもありましたが。

 この章は枚方くんの大森電車区異動の裏側になりますね。「シリウスの涙」が完全に臨海線&浜川崎支線での話になっており、希望ちゃんが出てくる余地が一切なかった上、 希望ちゃん関係の話も流れが二転三転していたのですが、「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版の時節設定を変更しているうちに、枚方くんに対する希望ちゃんの気持ち、 というのが見え、結果として、枚方くんが悪者になってしまいました(苦笑)。書いた当の本人が言うのは何ですが、仕方ないんですよね。結婚を約束した恋人を亡くし、 更に最愛なる家族を失ったことで配置転換を勧められた側から見たら、都合の良い異動なのは間違いないですから。


 「鉄道と電気~志穂の愚痴り大会」では、ことに電車運行に密接する電気のことを取り上げました。事故例にJR東日本の新宿変電所火災 (そういえばそんなことがあったなぁ、と思い出せる変電所火災)を挙げ、文中に出てくる架線切断事故もJR東日本の事故(2007年6月)、 ダメ押しに志穂ちゃんのプロフィール作品「いつの日にか」の内容からして、彼女のお相手をJR社員に設定しましたが、鉄道と電気の話は、どの鉄道会社も同じです。 会社によっては、線路整備よりも電気を前面に出しているところがありますが、ウィキペディアでも、線路、信号、電気の順ですから、会社問わずに電気関係の社員さんは、 やるせなさを感じていると思います。鉄道員と言われると駅員や乗務員のイメージが強いのですが、陰で支えるメンテナンス系社員も鉄道員、 ということを心に留めて頂ければと思います。冗談抜きで、電気が止まったら最後、電車は動きません。


 「現場に供えられた花」ですが、ここでは「一輪の花」の裏側を通して、二つの考察をしております。一つは、運転士における人身事故の苦悩、 もう一つは章のタイトル通り。前者は正直な話、運転士でないとその苦しみは分かりません。話したくなければ話すのを拒否出来ますし。15年ぐらい前、 とある京浜東北線の運転士さんとお話をする機会があったのですが、なまじ業界のことを知っていたが故に、椋岡も人身事故のことを聞いてしまいました。 それでも、事故の話をされたので、事故にあった側の苦しみを少しでも伝えることで、自ら線路に向かう人たちを減らしたい……その運転士さんが椋岡に託した願いと受け止めて、 今後書く作品に願いを込めようと思います。

 一方の、現場に供えられた花についてですが、「一輪の花」を書いたときは、現場に供えられた花を関係者が見た時の感情、というのが全く分からず、 罪の償いをすることが観点となっていました。しかし、現場に供えられた花を見る関係者の気持ちを知ることがあり、その観点で「一輪の花」を読み返し、 さらに「一輪の花」の時節設定を見直した結果、根津くんが悪者になってしまい、また、希望ちゃんを泣かせてしまうことになりました。一応、 フォローは入れましたが……フォローになっていますかね?。尚、希望ちゃんの忌引き休暇明けの話は2014年5月に書き直しております。


 「五年前の誓い」は、道生さんの話を踏まえて、「白の花束」で書いたことの後日談的な内容ですが、同時に、希望ちゃんの進退の伏線にもなっています。 登場人物の年齢を変えないで話を進める作家さんもいますけど、近年書いている作品の傾向が、社会小説に近いので、 社会情勢に合わせると登場人物もそれなりに歳を重ねる訳でして……要するに、いつかは、希望ちゃんも運転台を下りる時が来るんですね。2014年1月の時点で、 希望ちゃんが運転台を下りるタイミングと理由は決めましたが、「聴け、蒼天の詩を」の全面改訂が終わらないことには、何も始まりません(苦笑)。 椋岡的には、ギリギリまで希望ちゃんに頑張ってもらおう、と考えております。


 「はるか、大地の向こう」は一転して、ネタ要素が強めの章です。椋岡の作品って、やたらと吹奏楽が出てくるのですが、それらの中で登場する3曲のうち、 2曲の解説を兼ねています。文中に出てくる「天使ミカエルの嘆き」については、「聴け、蒼天の詩を」旧作でもさらりと流してしまったので、 生前お世話になった作曲者への追悼の意を込めて書きました。

 この章のベースは、発表時期未定の希望ちゃんの結婚記念旅行本なのですが、いやはや、初期に書いた「あの大地はどこ~?」を今の文章レベルで書くとこうも違うのか、 という見本市になりました。これはこれで発表したいのですが、結婚記念旅行本故に、それ以外が終始お惚気とネタになっており、 社会情勢を踏まえた作品における希望ちゃんのイメージを崩すので、オンラインで発表出来るのは、本当に「あの大地はどこ~?」の部分だけですね (追記:2013年10月に「図書室」に掲載しました)。 それ以外はオフライン限定で、お渡しする際も、希望ちゃんに対するイメージが変わっても大丈夫、という方のみで……と言ったところで、 こちらも「聴け、蒼天の詩を」の流れを変更することで、書き直しを要することになりまして、完成はまだ先だったりします。


 「二つの震災」は、当サークルにおいて力を入れた、通称「震災プロジェクト」を踏まえて、東日本大震災で感じたことを、希望ちゃんに代弁してもらいました。 正直な話、被災地以外の方々で、東日本大震災のことを意識しているかどうかは、地震発生時にどの場にいたか、に掛かっていると思います。椋岡は在宅中で、 すぐにテレビを見られる環境でしたが、それが逆に、津波が街を襲う瞬間を見ることとなり、今でもトラウマとなって、「おほなゐ」を聴くことすら出来ません。 それでも、少しながらも心に余裕が出て来たので、被災された方々に近い側の気持ちを外に出すことで、皆様にも被災された方々の気持ちを考えて頂ければ、と思います。 計画停電のことも、いわゆるSNSサイトを見ていると、いろいろな地域の人々の考えが一度に分かってしまうものでして、その度に複雑な思いをしましたね。 そのことも踏まえたのは良いのですが、流れ的に半ば強引になったかもしれません。


 「エピローグ~信頼を守る絆」で、いかにして2003年と2013年を結びつけるか、と考えましたが、ちょうど良い具合に2003年度吹奏楽コンクール課題曲に 「マーチ『列車で行こう』」という曲がありまして、この「曲名」を通して感じたことを語り合う方向で、ネタ落ちを回避出来ました。ただし、 希望ちゃんの「ちょっと主婦モード」から始めたので、終わりも「ちょっと主婦モード」で(笑)。「ちょっと主婦モード」とは言え、誓いから一気に飛ばすのは、 雰囲気ぶちこわしになりそうだったので、「風紋」という曲でワンクッション置きました。1987年度の課題曲で、希望ちゃんが中学3年生の時ですし。

 ただ、当作品の草稿を書いていた時は、まだJR北海道の問題が大きくなる前でして、「椋岡が何か書くと洒落が洒落にならない時がある」というジンクスが見事に当たってしまいました。 サイトにアップした後でしたからね、様々な問題が浮上したのも。非常に複雑な思いでいます。


 こんな感じですが、執筆をしながら、今まで椋岡が書いてきた作品は、重いテーマかネタの両極端ではないか、と撃沈しました。中間の作品ってそんなにないですね。 海岸線が出てこない作品に中間のものがある、とも言えます。もっとも、当の本人からして、ネタ体質であることを自覚していますので、無理もないのですが。 そういう状態ですので、今回の作品においても、重いテーマの章とネタ要素の強い章とで、文章の重みも異なってきました。今後のことを考えると、 発表する作品を重いテーマに絞らないと、「椋岡成美は一体何を書いている人なんだ?」と思われるのは間違いないですのが、気分転換用に考えている作品もチラホラ。


 4年ほど、劇作家を目指して戯曲を中心に書いており、小説の書き方とか忘れているのではないか? と思ったのですが、意外にも残っておりました。むしろ、 プロットの中身がほとんど会話で、その会話も舞台の台詞同様に結構細かいことを書いていたので、それを地の文にしていくことが出来た感じです。 戯曲というか舞台台本って、台詞とト書き、劇作家側からの演出指示だけで構成されているんですね。登場人物の心情を表現するのは、 台詞で演出家と役者さんに意図することを伝える戯曲よりは、地の文で書ける小説の方がやりやすい、と思っている次第です。故に、椋岡としては、戯曲から小説を書くよりも、 小説から戯曲を書く方が難しいと思うのですが、戯曲と小説の両方を書ける人ってなかなかいないんですよね。井上ひさしさんは両方をやってのけたので、尊敬する作家の一人です。 ともかく、文章力は常に磨いていかないと、すぐに曇ってしまうので、この先も、常に文章を綴って、文章力を磨いていこうと思います。


 「あとがき」という名の解説、としては以上です。続いて「10年間を振り返って」です。