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★「聴け、蒼天の詩を」の歴史(という名の墓穴掘り大会)

 サークル10周年記念作品「蒼色の笛」の「10年間を振り返って」に、椋岡が小説を書こうと思った理由を記載しておりますが、 そのうちの「鉄道員の『品川希望のぞみ』を主人公にした話を書きたい」について、 どういう経緯を辿って「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版に至っているのかを振り返る、歴史といえば格好良いけど、実態は墓穴掘り大会の企画を立ててみました。 かなりの長文ですので、予めご了承下さいませ。


1)大雑把な歴史(?)

 いつ頃かは思い出せないのですが、「品川希望」と「奥沢隼人」の話を書きたい(描きたい)というものがずーーーーっとあったものの、 京浜東北線103系&209系と東急にハマってしまい、鉄ちゃん(注:椋岡は「鉄子」という愛称が広まる前からの鉄道ファン。時期にして1989年頃から)と化したため、 しばらく放置しておりました。

 ある日、プロバイダ関係の書類を挟んでいるファイルの中身を見たところ、「感熱紙使用前提のワープロ」で作成した感熱紙の原稿(?)も挟まっているのを発見。 感熱紙印刷も保存状態が良ければ、15年以上経っても読めるレベルという劣化の遅さに、そっちの方でまず驚いたものです。

 椋岡がインターネットを始めた時期も勘案すると、遅くても1997年頃には、品川希望(以下、愛情をたっぷり込めて希望ちゃん)と、 奥沢隼人(以下、奥沢くん)を中心にした話の駄文が出来た模様。書いた本人が詳細を思い出せないのがアレですが。


 椋岡のパソコン内には、現存する二人の話の中では最も古い「六月の太陽」というフォルダがあり、2014年6月上旬に怖い物見たさでフォルダ内のWord文書を開いてみたら、 1999年秋に作成したものがそのまま残っていました。余りもの古さに、Word2013では保護モードでしか開けませんでした。

 この頃はまだ小説の書き方が分からず、「プロットを作る」という知識も無く、草稿を途中まで打ち込んだところで中断。その後は、同人誌向けの漫画や小説未満の小作品を書き、 2003年になって本格的に小説を書くようになりましたが、しばらくは枚方くん関係が中心となり、希望ちゃんと隼人くんの話はナシ(「『蒼色の笛』10年間を振り返って」参照)。


 2004年3月下旬になって、何を思ったのか、「六月の太陽」を作り直そうと考えて、「六月の蒼空」とタイトルを変更し(以下、旧「六月の蒼空」と表記)、 今度はプロットも作成した上で草稿を書くものの、やはり途中で中断。

 2006年9月に、ドラマ原作公募に向けて、「六月の蒼空」のタイトルのまま、改訂版としてプロジェクト発足(以下、新「六月の蒼空」と表記)。新「六月の蒼空」で、 それまで駅員だった希望ちゃんの設定を、最初から車掌に変更。プロットもかなり細かく作成し、草稿を書き進めていたのですが、締め切りに間に合わないこともあり、 発展的解消となりました。


 新「六月の蒼空」を見直して、現代小説にするべく、タイトルを「聴け、蒼天の歌を」に変更。しかし、「詩」は書けても「詞」が書けず、 苦しさ紛れに「聴け、蒼天の詩を」にこっそり変更(以下、「聴け、蒼天の詩を」旧作と表記)。小牧くんと結婚するところまで、 個人誌としてコミケなどの同人誌即売会で発表したものの、プライベートで色々と問題が山積みとなり、それらを片付けているうちに、劇作家を目指したため、 第3巻相当分は幻になりました。


 2012年に入院したことを受け、劇作家になることをすっぱり止めて同人小説作家に戻ったところで、何を書こうか……と考えて、 思いついたのが「聴け、蒼天の詩を」旧作の続き。しかし、椋岡の人生観が180度変わり、宗教的なものを受け入れられなくなった椋岡に、 キリスト教の教義のオンパレードとも言える第3巻相当分は書けない、ということで、キリスト教の教義に頼らない全面改訂を決めて、 2012年11月に「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版として再スタートを切り、2015年4月になってようやく第1章に執筆を始めたところです。


2)基本的な流れ

 「六月の太陽」から「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版に至るまで、変更にならなかった基本的な流れは以下の通りです。

 尚、上記以外のことは思いっきり変更となり、また上記のことも細かい部分で変更になっております。ということで、細かい設定の違いなどの説明に入りましょう。


3)時節設定の変化

 「六月の太陽」の時節は原稿内では明記されていなかったのですが、文中に「労基法の改正で女性も深夜勤務が出来る」とあるので1995年頃からの話の様です。 原稿の流れを見ると、1997年の労働基準法改正を受けて希望ちゃんは車掌になることは分かるのですが、実際に車掌になったのかは原稿になく、 書いた当の椋岡も分かりません(爆)。

 旧「六月の蒼空」も、1997年の労働基準法改正を受けて、希望ちゃんに運転士登用の打診がなされ、試験を受けた翌年秋に設備が整ったことで、車掌乗務となり、 運転士養成に入るところでエンドマークの予定でしたので、最終的には1999年までの話に。


 新「六月の蒼空」から、女性の深夜勤務規制が実質廃止になった1999年からスタートで、希望ちゃんも車掌乗務からスタート。ただし、 「聴け、蒼天の詩を」旧作に引き継ぐ時に、こともあろうにスタートを1998年と間違えてしまい、全面改訂を決めた時にその致命的なミスを発見したことで、 全面改訂版のスタートの時節を1999年に修正して、以降の時節を1年繰り下げとなりました。よって、希望ちゃんが運転士になり、奥沢くんが亡くなるのは2000年、 小牧くんとの結婚は2001年に変更となりました。


 また、「聴け、蒼天の詩を」旧作までは、利緒さんとの結婚のタイミングを小牧くんが亡くなってから1年後に設定して、2002年までには結婚としており、 他の作品もそれに合わせていたのですが、全面改訂版で時節設定を変更することで、2004年6月に結婚と変更になりました。


4)人物設定いろいろ

 これだけ長い期間が掛かると、登場人物の設定も変化していきます(苦笑)。


 まず、希望ちゃんの設定。前述の通り、「六月の太陽」~旧「六月の蒼空」は駅員からスタートで、労働基準法の改正を受けて車掌になるところで終わり。 新「六月の蒼空」からはスタートの時点で、1999年の女性の深夜勤務規制の実質廃止後の、運転士登用前提の車掌に変更。ただし、新「六月の蒼空」では、 奥沢くんが亡くなってから運転士養成に入るところを、「聴け、蒼天の詩を」旧作からは、奥沢くんが白血病で入院中に運転士養成に入り、 先に運転士になる様に変更しております。 尚、希望ちゃんの生年は1972年で統一していますので、作品によってスタート時の年齢が異なることになります、はい。


 次に、設定が大きく変わったのが、利緒さん。「六月の太陽」から「聴け、蒼天の詩を」旧作を書いている途中まで、 「大卒で入社し、幹部候補の現場研修で運転士になったところで、このまま親友の遺志を受け継きたい思いで現場に残った、異色の大卒運転士」という設定で、 小牧くんと同期入社という、比較的若手に入る年齢設定でした。そのため、当時のブログには「小杉クン」と表記し、 過去に発表した「ほんとうのきもち」で希望ちゃんが「ウチのダンナが研修で運転士になった直後に」と言ったことを話しているのも、この影響です。 2007年に人身事故を題材にした公募作品を書いた時も、利緒さんの設定はこの設定。あ、ちょいと横道にそれましたね(苦笑)。

 「聴け、蒼天の詩を」旧作の第3巻分の推敲をしている途中で、大卒よりは大学中退にした方が良さそうと考え、作品中に登場する利緒さんからの手紙の文面も「大学を中退」に変更。 「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版においては、大学中退にプラスして年齢も上げて、希望ちゃんより7歳上で、指導主任という役職付きに変更となりました。 大学中退にして年齢を上げた理由については、ネタバレになりますので内緒で。


 逆に変更になっていないのが、奥沢くんと小牧くん。道生さんについては、「六月の太陽」と旧「六月の蒼空」では大森電車区の助役、 時節が変更となる新「六月の蒼空」以降では大森電車区の副区長に変更。また、「聴け、蒼天の詩を」旧作まではクリスチャンの設定を、全面改訂版では、 ごく普通の日本的な宗教観にしております。もちろん、理由があってのことですが、その理由はやはりネタバレになりますので内緒。


 その他の登場人物も色々とおりますが、ここでは割愛。「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版で大幅増員をしており、進捗報告ブログより更に細かいプロット作成用登場人物一覧には、 多摩川高速鉄道代表取締役社長を始めとする会社関係はもちろん、登場人物の家族、親戚、友人知人まであり、他の作品から拝借した登場人物も多数おり、 壮大なスケールになっています(爆)。


5)ネタになりそうな各作品の設定

 続いて、椋岡の計画性のなさが良く分かる、各作品における少し細かい設定の中でネタ的な部分の説明です。


○「六月の太陽」

 まず、海岸線が「マリン線」(笑)。多摩川本線と直通運転をしております。また、希望ちゃんは大森駅務区でも多摩川本線側の管轄下駅への配属で、駅務係としての勤務です。

 この作品の時点で、登場人物の名字が東急と名鉄の駅名に偏っておりまして、東急の駅名から拝借した利緒さんと、名鉄の駅名から拝借した小牧くんの名字が似通ってしまい、 非常に紛らわしい結果になりました。ま、似たような名字の方と結婚される方も多いですから「笑って許して」状態です。

 希望ちゃんが鳥取砂丘に行く設定は、奥沢くんの葬儀を米子市内の教会で執り行い、社内吹奏楽団の代表として参列した帰りに小牧くんと一緒に行く、 という形で決まっておりました。

 この作品では、希望ちゃんと小牧くんが正式に婚約する直前に、小牧くんは殉職となっており、そのため、初期作品の「一輪の花」において、 登場人物同士が謎解きをしている時に、品川姓の希望ちゃんの名前が出て「婚約者なら花束では」というのが出てくる、という次第です。

 で、この作品、書きたいことを思いつきで書いておりまして、設定がぶっ飛んでいる部分が多く、 なぜ名鉄のパノラマメイツ(かつてあった、名鉄特急パノラマSuper指定席車専任の女性車掌の愛称)が登場するんだ?と言った有様です。全般的に、 鉄道趣味ともいえる色(鉄分)が濃く、読み返して撃沈したのでありました。


○旧「六月の蒼空」

 プロットを作成することにより、主たる登場人物を、希望ちゃん、奥沢くん、小牧くん、利緒さんに、道生さんとすることで、 「六月の太陽」から不要な部分をバッサリ削除しました。

 奥沢くんが亡くなった後、不眠が出て来た希望ちゃんが精神科の診察を受けて休職するる設定は、ここで登場。ただし、この時の希望ちゃんの職務は駅務係なので、 休職期間も短いのですが。この作品から、小牧くんの殉職を、希望ちゃんと入籍し、結婚式を挙げる直前に変更。結婚式もクリスマスの頃という設定も、この作品からです。

 タイトルに「六月」が付いているのは、奥沢くんが亡くなったのが6月で、希望ちゃんと小牧くんの交際が始まるのも、奥沢くんが亡くなってから1年経た6月によるもので、 要は6月に拘りたかった、と。作品中の鉄分が薄くなった代わりに、中島みゆきさんの色が濃くなり、どちらかと言えばインスパイア的なものがあります。


○新「六月の蒼空」

 ここで、最初から希望ちゃんが「運転士登用前提条件で半年乗務の車掌」という設定に変更になったのは、前述の通りで、希望ちゃんが本務として乗務中に、 車内改札要員で同乗中の奥沢くんが乗務員室内で倒れるという設定に変更しました。ただし、利緒さんがその列車を運転していたという設定は、この作品では登場せず。

 希望ちゃんの運転士養成も追加となるのですが、この作品では、奥沢くんの白血病が判明して、骨髄移植のドナーを待っている間に亡くなった後での運転士養成。 奥沢くんが亡くなったことによる哀しみなどは、小牧くんに一貫して相談していくことで、病院に行かないで奥沢くんの死を受け止めて運転士になる、 という流れを組んでおりました。さすがに、運転士養成中に病院に行けませんから(苦笑)。

 また、プロットでは、小牧くんが亡くなった後に、希望ちゃんは教会に行き、洗礼も受ける設定になっており、洗礼を受けた後に、 その前から受け取っていた利緒さんからの手紙の返事という形で、利緒さんとの交際を始めて、小牧くんが亡くなった1年後に再婚、という流れを組んでいましたが、 結局、草稿は小牧くんが亡くなり葬儀関係の部分で終わり、「聴け、蒼天の詩を」旧作に引き継いだのは、大雑把な歴史(?)の通りです。

 この作品においても、中島みゆきさんの色が濃いのですが、夜会Vol.13「24時着0時発」と夜会Vol.14「24時着00時発」からのインスパイアに近いものになりました。


○「聴け、蒼天の詩を」旧作

 大筋は新「六月の蒼空」と大きく変わらないのですが、作品中において「六月」の要素が減ったため、大雑把な歴史(?)に記載した様に、タイトルを変更しました。

 奥沢くんの白血病が骨髄移植が必要なタイプであるのは変更ないのですが、骨髄移植を受けて一旦復職する流れに変更し、希望ちゃんの運転士養成も、 奥沢くんが骨髄移植を受けた後の寛解に向けての入院中に変更となりました。

 新「六月の蒼空」では没になった、希望ちゃんが鳥取砂丘に行くシーンは、復職した奥沢くんと一緒に、奥沢くんの実家に行くのに併せて行く形で復活。そして、 奥沢くんと結婚の約束をした直後に、奥沢くんの白血病が再発して急逝、という形になりました。

 奥沢くんが亡くなった後についても、希望ちゃんの不眠とうつ病による休職が復活。また、小牧くんの登場タイミングも、 希望ちゃんがうつ病で休職してからに変更となりました。ついでに、希望ちゃんの「可愛い弟」の宮浦くんがゲスト出演(笑)。

 余談ながら、奥沢くんが亡くなるまでを第1巻として2007年夏に発表し、奥沢くんが亡くなってから小牧くんと結婚したところまでを第2巻として2007年冬に発表し、 小牧くんが亡くなってから利緒さんと結婚するまでの話を第3巻として発表する予定でした。

 この作品における、中島みゆきさん度ですが、夜会Vol.8「問う女」が中心ですが、前作までと比較すると少々薄くなっております。 それでも「永久欠番」は外せませんでしたね。


6)重複になるけど「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版の話

 サークル10周年記念「蒼色の笛」の内容と重複しますが、それまでの作品と大きく変わった部分で、暴露出来る変更点を紹介します。


 まず、全体を通して、キリスト教の教義が出てくるシーンがかなり減っていることですね。希望ちゃんの設定も「キリスト教主義の学校出身で、 中学生になるまでは教会学校にも通っていて、知識としてキリスト教の教義を知っている」程度のもの。 プロットを作成しているうちに、キリスト教の教義が出てくるシーンも出て来たのですが、これも「知識」で知っているものを、 ごく一般的な日本の宗教観を持っている人に説明する程度のものです。教会そのものも出てこないと思います、はい。


 また、希望ちゃんの誕生日を6月に設定し、誕生日前後に様々な出来事があることで「六月」との関連付けを再び強くしております。極端な話、 全面改訂版は1999年の希望ちゃんの誕生日から2004年の誕生日までの話となります。2004年6月に利緒さんと結婚というのは、そういう意味です。


 新「六月の蒼空」から消えた、奥沢くんが倒れた列車の運転士が利緒さん、という設定を復活し、本務の希望ちゃんと、大森中央駅から乗務した利緒さんとで、 終点の多摩高本牧ほんもく駅で奥沢くんの体調を巡って言い合う形で、 冒頭からの登場になりました(「蒼色の笛」第9章参照)。 どうやら、椋岡は利緒さんを少し悪者にしたいらしいです……もちろん、電車区での再会シーンなど、フォローはしっかりしております(爆)。

 奥沢くんの白血病を化学療法が有効なタイプに変更し、骨髄移植を受けずに治療を進め、希望ちゃんの運転士養成中に一旦退院して、 引き続き休職して強化療法を続けていく流れに変更。これにより、希望ちゃんの車掌時代の話を前作より多く出すことが出来ました。


 全面改訂版では、運転士養成の同期の中でも、特に仲が良い同期3人(西春くん、北園くん、湯浅くん)と希望ちゃんとで「チームはまかいじ」と称して常につるんで、 運転士仲間の結びつきの強さを出しております。そのうち湯浅くんは多摩川本線の八王子乗務区出身(運転士での配属は多摩川乗務区)で、希望ちゃんが多摩川本線に乗車する時の華に。 ええ、社内吹奏楽団の練習場でもある研修センターが多摩川本線沿線にあり、直営病院はむさし線沿線、後に希望ちゃんが引っ越しする先も多摩川本線に設定しましたので、 希望ちゃんが乗客として利用する時に、なにげに登場(笑)。

 登場人物と言えば、前作ではゲスト出演だった宮浦くんも、奥沢くんが倒れた日から登場します。時節設定の変更で宮浦くんの職務設定を見直したら、 希望ちゃんと車掌区で同期配属になり、新人車掌同士でのやりとりに持ってこいなんですよ、これがまた。こういうのをケガの功名と言うのでしょうね。 更に、多摩高本牧駅のエンド交換で希望ちゃんと利緒さんが言い合ったともなれば、本牧駅務区の内海くんを出すと面白いかもということで、 やはり奥沢くんが倒れた日に登場。ただし、全体を通して、内海くんの出番は少なめです。


 希望ちゃんの運転士養成の線路見習いで、初運転に大幅な過走という設定も変更ないのですが、運転していた車両を「常用ブレーキの効き目が悪くて、現場では不評の1005F」 (「蒼色の笛」第2章参照)にして、過走の理由と距離も変更して、多摩川高速鉄道の内情を組み入れることに。これにより、「聴け、蒼天の詩を」旧作とは全く異なる、 社会派の色が含まれたものになりました(ちーん)。

 運転士養成も旧作では端折っているので、「チームはまかいじ」メンバーをフル活用しながら、少し細かめに書くことにしておりますが、墓穴を掘った感じがします。 ここで墓穴を掘ったことで、旧作にはなかった事故再発防止委員会と新形式車両投入が登場し(どちらも登場するのは、小牧くんが亡くなった後ですが)、 社会派の色がパワーアップ(ぇ。


 奥沢くんの白血病は、3回目の強化療法で入院する前に「再発していたらしい」と伝聞にして、葬儀も米子に戻すことで、希望ちゃんのうつ病もちょいと重めにしております。 やっぱり、椋岡には、登場人物に対して残酷になる傾向があるみたいですね(汗)。

 希望ちゃんの休職期間を延ばして、更に小牧くんの性格の設定を変更し、そのことで利緒さんとの微妙な恋の駆け引きも入れております。また、 希望ちゃんが乗務員になるまでの経緯(幼少期を含む)を説明するのに、小牧くんとの結婚を決める時に回想する形を取ることにしました。ことに女性の場合、 結婚と出産において仕事との両立で悩みますから、それを上手く利用したとも言えます。


 ここまでは、旧作で発表した小牧くんとの結婚までで、ここから先は「蒼色の笛」に書いたのでバラせる、小牧くんが亡くなってからの話になります。


 小牧くんが亡くなった現場が、希望ちゃんの職場とも言える海岸線の駅のため、現場に供えられた「ピンクの花らしきもの」を見た希望ちゃんは現場を通ることが出来ず、 職場の寛大な理解と協力によって、現場を通れるようになるまでの間に、メンタルケア担当の指導主任としての利緒さんが登場(「蒼色の笛」第12章参照)。 我ながら、多摩川高速鉄道独自の「指導主任」は作品を書く上で都合の良い役職だと思っております(爆)。


 その利緒さんとは、小牧くんの殉職を受けて発足された事故再発防止委員会で一緒になり、新形式車両の設計変更による車両プロジェクトチームでも一緒。 ここまで来れば希望ちゃんと利緒さんが良い関係になる……と思わせながら、実際にはそうではなく、 冷却期間を稼ぐ意味で2002年の吹奏楽コンクール関係の話(「蒼色の笛」第15章参照)を盛り込んでいます。 これも、時節設定が変更になったことで、偶然にも同じタイミングになったんですの。ただ、自由曲が自由曲なので、コンクールそのものよりも、 楽曲の背景や作曲の意図について、社内吹奏楽団の愉快な仲間での意見交換がてんこ盛り、になりそうな気配ですが。

 そして、2002年初冬に、希望ちゃんが主任推薦昇格の相談を利緒さんに持ちかけたことで、ようやく同僚の関係から晴れて恋人の関係になります(「蒼色の笛」第9章参照)。 おそらく、「さっさとくっつければ良いのに、椋岡はどこまで引っ張る気なんだ」と思われる展開ですね(汗)。


 前作までキリスト教の教義でもって考えていた「相手を許すこと」を、キリスト教の教義をあまり出さないで考えるのが2003年での話になるのですが、 この部分に、過去に発表したとある作品の設定が生かされることに。どの作品の設定がどう使われるのかは、完成してからのお楽しみ(?)で。

 また、前作までは、希望ちゃんに課せられたものを乗り越え、洗礼を受けてから利緒さんとの交際が始まるのですが、「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版では、 利緒さんとの交際が始まってから、課題とも言える部分を考える展開になっております。その方が、キリスト教主義の学校に通っていた故に、 宗教的な考えが少し混じっている希望ちゃんの感情と、ごく一般的な考えの人(利緒さんに限らず)の感情などを比較出来るものですから。


 2004年に入ってからは、利緒さんが希望ちゃんにプロポーズをするタイミングの説明として、一気に社会派の色が出て来まして、 希望ちゃん関係の作品と接点がないはずの臨海線営業所から、枚方くんが大森電車区に転入し(「蒼色の笛」第10章参照)、 希望ちゃんの師匠である片倉さんの臨海線営業所への異動(「蒼色の笛」第8章参照)と、大森電車区全体と労組関係で一悶着状態の中、 希望ちゃんと利緒さんは愛と信頼の絆を強く結び、2004年6月に結婚となります。


 お気づきかと思いますが、小牧くんが殉職に至った背景(女性が自殺行為を図ろうとした理由)については、一切伏せております。また、追加となった片倉さんの異動の裏側とも言える、 多摩川高速鉄道の内情も伏せております。それらを発表出来るのは一体いつになるのか……頑張るしかないですね。



 以上、非常に長くなりましたが、「六月の太陽」から「聴け、蒼天の詩を」全面改訂版に至るまでの、歴史と言えば格好良いけど、実態は墓穴掘り大会でした。 最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。さぁて、頑張ってプロットを作りますかぁ~。


*駅名や地名、路線名で検索してヒットしてしまった方、全く関係ない話でスミマセン。